紀伊半島の環境保と地域持続性ネットワーク 紀伊・環境保全&持続性研究所
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  「害虫防除の常識」     (目次へ)

    2.有害生物(害虫)管理にあたって守るべき事柄

     2) 農薬使用者にかかわる農薬取締法の内容

 農薬取締法(農林水産省HP)は、第1条に、「この法律は、農薬について登録制度を設け、販売および使用の規制等を行うことにより、農薬の品質の適正化とその安全かつ適正な使用の確保を図り、もって農業生産の安定国民の健康の保護に資するとともに、国民の生活環境の保全に寄与することを目的とする」と3つの目的を掲げている。

 農薬取締法の対象とする農薬には、農作物を害する病害虫を防除する殺虫剤・殺菌剤、雑草を防除する除草剤、農作物の生理機能の増進や抑制に用いられる成長促進剤や発芽抑制剤等が含まれる。この法律では、防除のために用いられる天敵も農薬とみなされる。ただし、地元で採集した天敵を地元で使う場合や、重曹、食酢は「特定農薬」として、規制の対象から外されている。

 農林水産大臣は、下記のような場合にはその農薬の登録を保留し(農薬登録を見合わせ)、記載内容の変更や農薬の品質の改良を指示することができるとされている。下記の保留条件は、上記の3つの目的のいずれかに該当している。登録の有効期間は3年間であるので、再登録の際に保留条件を逸脱していないか見直される。また、登録期間中であっても、下記のような事態が生じた場合には登録が取り消される。

1)その農薬によって薬害が生じる。
2)危険防止方法を講じても、人畜に危険を及ぼすおそれがある。
3)農作物への残留性が高く、農作物の汚染が生じ、その利用により人畜に被害が生じるおそれがある。
4)土壌への残留性が高く、土壌汚染が生じ、農作物を通じて人畜に被害が生じるおそれがある。
5)水産動植物に対する毒性が強く、持続し、水産動植物に著しい被害が生じるおそれがある。
6)公共用水域の汚染が生じ、水あるいは汚染された水産動植物の利用により人畜に被害が生じるおそれがある。
7)薬効が著しく劣り、農薬としての使用価値がない。
などである。

 農薬使用者として、この法律の守るべき事項、関係する事項を挙げてみる。
1)登録農薬以外は使わない。ただし、特定農薬は使える。

2)「農薬を使用する者が遵守すべき基準」(農林水産省HP)を守って防除を行う。

3)農薬の使用に当たっては、普及指導員、病害虫防除員や都道府県知事が指定する者の指導を受けるように努める。

4)水質汚濁性農薬については現在6種類が定められているが、これらを使用規制地域で使用する場合には都道府県知事等の許可が必要である。使用規制地域以外では、水質を汚濁し人畜に被害が生じないようにすることが不可欠であるが、できるだけ水質汚濁性農薬は使わないようにした方がよい。

5)省令で定められた「販売禁止農薬」を個人的に輸入したり、不法に入手して使用しない。

6)農林水産大臣または環境大臣は、農薬使用者に対して、農薬の使用についての報告を命じ、もしくは必要な場所に職員を立ち入らせて農薬を集取し、帳簿・書類を検査することができる。農業者は、このような事態にならないように法令を守って農業経営を行う。 

7)農薬の使用についての義務違反をした場合には、3年以下の懲役、100万円以下の罰金が課される。農薬使用者は、消費者と環境に対する安全性を第一にして、農薬の安全使用に努める必要がある。

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